再現答案民事系科目第3問(民事訴訟法)

民事系科目第3問

設問1
第1 課題⑴
1 Bに対する請求
⑴ Aは乙地裁において、Bに対して、共同不法行為に基づく損害賠償請求権(民法719条1項前段)として400万円の支払いを求める反訴を提起する(146条)。
⑵ Aの請求は、本訴であるBの訴えの訴訟物の反対形相であるから訴訟物が一部同一であり、「本訴の目的である請求…と関連する請求」といえる(146条1項本文)。
⑶ もっとも、Aの請求は142条に反しないか。
ア 142条が直接適用される「事件」の同一性とは、当事者及び訴訟物のみならず、請求も同一である場合をいう。
 本件では、Bの訴えは確認訴訟であるのに対して、Aの訴えは給付訴訟であるから、「事件」の同一性は認められず、142条が直接適用されることはない。
イ もっとも、142条の趣旨は、重複審理による被告の応訴の煩、訴訟不経済及び既判力の矛盾抵触のおそれを回避する点にある。そのため、これらの弊害が生じる場合には同条が類推適用される。
 本件において、Bの訴えの訴訟物は、共同不法行為に基づく損害賠償義務のうち、Aが主張する損害額400万円とBが見積もった150万円を差し引きした250万円の存否である。これに対して、Aの訴えの訴訟物は上記の通りであるから、250万円の範囲で訴訟物が同一である。
 そうすると、その範囲で重複審理及び既判力の矛盾抵触のおそれがあり、反訴は不適法であるとも思える。
イ しかし、反訴は本訴と同一の裁判所において審理判断されるから、重複審理による被告の応訴の煩や訴訟不経済は生じない。また、既判力の矛盾抵触も回避され、事実上矛盾抵触のおそれもない。
したがって、反訴の場合には、142条の所期する上記弊害は生じないから、同条は類推適用されず適法である。
2 Cに対する請求
⑴ 反訴も訴え提起の一種であるから、訴えの規定に従う(146条4項)。
⑵ B及びCは共同不法行為者であり合一確定の必要ではないから、Aの訴えは通常共同訴訟(38条)にあたる。
 そして、共同不法行為者の損害賠償義務は「訴訟の目的である権利又は義務が…共通」といえるから、同条前段の要件を満たす。
⑶ よって、Cに対する訴訟提起も認められる。
第2 課題⑵
1 Aは甲地裁において、B及びCに対して別訴提起する。
2 別訴の場合には、反訴の場合とは異なり、重複審理による被告の応訴の煩や訴訟不経済、既判力の矛盾抵触のおそれがあるから、142条類推適用により別訴は不適法とも思える。
3 もっとも、Bの訴えは250万円の損害賠償義務の存否の確認訴訟であるのに対して、Aの訴えは400万円の給付訴訟であるから、その額の点と給付判決には執行力がある点でBの訴えの利益を包摂する。そのため、Aには給付訴訟を提起する訴えの利益が認められる。この訴えの利益を保護すべきである。
一方で、上記弊害については、裁判所が訴訟を乙地裁に移送し(17条)、その上で弁論併合することを強制することよって回避することができる。
したがって、訴えの利益を保護するため、上記の通り、裁判所の裁量権を拘束して移送及び弁論併合を強制すべきである。
4 よって、別訴提起が142条類推適用により不適法とされることはなく、適法である。
設問2
1 Bは221条に基づき文書提出命令の申立てをする。
2 これに対してDは、Aの診療記録はいわゆる自己利用文書(220条4号ニ)に該当するから、提出を拒むことができると主張する。
 自己利用文書とは、専ら内部利用のために作成され外部に開示することが予定されていない文書であって、これを開示することによって個人のプライバシー侵害等の看過し難い不利益が生じるおそれがあり、特段の事情がないものをいう。
 本件において、Aの診療記録はその性質上病院内で利用するために作成され外部に開示することは予定されておらず、診療記録にはAの病歴などの秘匿性の高い情報が含まれているから、これを開示することによりAのプライバシー侵害という看過し難い不利益が生じるおそれがある。特段の事情もない。
 したがって、自己利用文書に該当し、提出を拒絶できる。
3 これに対するBの主張は以下のとおりである。たしかに、Aの過去の診療記録をすべて提出するのであれば看過し難いプライバシー侵害のおそれがある。しかし、本件では、Aが既にあった症状の治療を上乗せして請求してないかどうかや、後遺症が本件事故と無関係なものでないかを確認するために必要な範囲で提出を求めるものにすぎない。そのため、看過し難い程度のプライバシー侵害が生じるとはいえない。
 したがって、Aの診療記録は自己利用文書には当たらない。
設問3
第1 主張アの当否
1 補助参加の申出は、「補助参加人としてすることができる訴訟行為」と「ともに」することができるから、第一審で補助参加していないBであっても、補助参加の申出と同時に控訴提起することは可能である(43条2項)。
2 補助参加人は「上訴の提起」をすることができる(45条1項本文)。そして、Bが控訴提起したのはAの控訴期間内(285条)であるし、AのCに対する請求は全部棄却判決となっており控訴の利益も認められるから、45条1項ただし書きにも反しない。
3 たしかに、AはCに対して控訴するつもりがなかったが、これは積極的に控訴提起する意思まではなかったにとどまり、控訴提起をしないとの訴訟行為があったとまでは言えない。そのため、Bの控訴提起がAの「訴訟行為と抵触する」(45条2項)とは言えない。
4 したがって、主張アは不当である。
第2 主張イの当否
1 補助参加の利益(42条)について、訴訟の結果につき「利害関係」がある場合とは、法律上の利害関係をいい、法的地位に対して法律上又は事実上不利な影響を及ぼすおそれがある場合をいう。
2 本件において、AC請求が全部棄却された場合、Cの損害賠償義務が不存在であると確定される。共同不法行為者は不真正連帯債務を負うと解され、負担部分を超える賠償をした場合には、他の共同不法行為者に対して求償権を取得する。そのため、AC請求全部棄却という判決主文の判断によって、Bの求償権の存否という法的地位に事実上不利な影響を生じる。
 したがって、補助参加の利益がある。
3 よって、控訴は適法である。
以上(2545文字)