再現答案公法系科目第1問(憲法)

公法系科目第1問

第1 購入する側について
1 本件条例7条は規制図書類を定めた上で、8条により店舗における規制図書類の販売・貸与を禁止している。8条1項は、青少年の規制図書類を購入等する自由(以下、「青少年の自由」という)及び18歳以上の者の規制図書類を購入等する自由(以下、「大人の自由」という)を制限する。2項も同様に、青少年の自由及び大人の自由を制限する。3項は、青少年の自由のみを制限する。
2 憲法21条1項は、表現をすること自体の自由のみならず、情報摂取の自由をも保障する。そのため、上記青少年の自由及び大人の自由は同条により保障される。
3 情報摂取の自由は重要である。また、本件条例は、わいせつ性などの内容に着目して規制図書類を定めるものであるから、内容着目規制である。内容着目規制は、公権力による恣意的な規制のおそれがある上、その制約的効果も大きい。
たしかに、青少年は情報の選別能力に乏しいため、情報摂取の自由の要保護性も小さいとも思える。しかし、青少年と言えども様々な内容の情報に触れることの重要性は否定できないし、情報選別の欠如による弊害防止は第一次的には保護者が配慮すべきであり、公権力による介入を許容する理由にはならない。
また、大人の自由への制限については、たしかに青少年保護のためのやむを得ない制限ともいえる上、市内で規制図書類を一切買えなくなるわけでもない。しかし、8条1項・2項の店舗で購入できないから制約も強度といえる。
したがって、立法目的が必要不可欠な利益の保護にあり、手段が立法目的達成のために必要最小限度でなければ違憲となる。
4 本件条例の立法目的は、青少年の健全な育成及び卑わいな書籍等がそれを買うつもりのない人たちの目に触れることを防止する点にある。これらの立法目的は必要不可欠といえる。
5 では規制手段は必要最小限度といえるか。
⑴ 規制対象の範囲
ア 本件条例7条は⑴⑵の要件を満たすものを自動的に規制図書類として規制対象とする。たしかに、日々発行される様々な出版物等を適切に規制対象とするためには、自動的に規制対象とすることが有効である。しかし、「衣服の…一部を着けない者」という要件に該当するものの中には、上半身を裸にしてするスポーツに関する書籍や、身体の一部を裸にすることにより表現するような芸術的な活動に関する書籍なども含まれる。「卑わいな姿態」、「殊更に性的感情を刺激する」という不明確な要件となっている本件条例の下では、これらの立法目的を阻害しない書籍等も規制対象となるおそれがある。そのため、個別指定方式を取らずに自動的に規制対象とする7条は必要最小限度とは言えない。
イ 本件条例は刑罰をもって規制図書類の販売を禁止しているから、刑法で処罰対象とならないものを実質的に処罰するものである。そのため、法律による相当程度具体的な委任が必要である。
ウ 本件条例は漫画やアニメなど絵による描写も規制対象とする。たしかに、絵による描写でも性的感情を刺激するものがあり立法目的を阻害するとも思える。しかし、上記の通り本件条例7条は不明確な要件となっているから、立法目的を阻害しない漫画等も規制図書類とされるおそれがあるから、必要最小限度とは言えない。
⑵ 規制の内容・方法
ア 8条1項は日用品販売店における販売等を規制している。日用品販売店は青少年や大人が日常的に利用するため、立法目的達成のために規制が必要不可欠である。
イ 2項は規制区域での販売等を規制している。たしかに、青少年の健全育成との関係では、青少年が頻繁に行き来する規制区域の規制は必要不可欠である。しかし、規制図書類を置いてあることを店舗の入り口等で注意喚起することで、入店を回避するなどして大人は規制図書類を見ることを回避できるから、その点で必要最小限度とは言えない。
ウ 3項は青少年への販売を禁止するが、一律禁止は必要最小限度とは言えない。
6 よって、本件条例は違憲である。
第2 販売等をする店舗について
1 8条1項は日用品販売店の規制図書を販売する自由を、2項は規制区域の店舗の自由を、3項は事業者の青少年への規制図書を販売する自由を制限する。
2 憲法22条1項は、職業選択そのものの自由のみならず、職業遂行の自由をも保障する。規制図書類を販売する自由は職業遂行の自由として保障される。
3 たしかに、日用品販売店においては、規制図書類の売上げが売上全体に占める割合は微々たるもので制約は小さいとも思える。しかし、これを販売していること自体に集客力があるから、その制限は制約として強度である。
 また、規制区域内の店舗においても、市内の別の場所に移動できるから制約が小さいとも思えるが、これは困難であるから制約は大きい。

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